藁をもすがる想いだからこそ必要なこと

10日、#胃がんキャラバン2019 のキックオフセミナーとして、国立がん研究センター東病院、設楽紘平先生に【今、あらためて知る、胃がんと治療のこと】という講演をしていただきました。
いつも、#希望の会 のセミナーは参加者が50名程度なのですが、本日は事前申し込みが70名のところ、当日参加もあり、約80名の方が参加されました。
北海道から数名、広島、四国からの参加もあり、この全国キャラバンへの期待の高さを感じることとなりました。
そして、患者家族が、科学を理解することの必要性を改めて確認する機会にもなりました。
胃がんの化学療法では、HER2遺伝子が陽性であるか、陰性であるかが第一次治療の選択の鍵になっています。
もちろん、ほとんどの方がその検査をされ、治療に結びついているのですが、残念ながら、患者のほとんどが、このHER2遺伝子のことを知らないでいます。
まして、昨年末に初めてがん種を超えて適応承認された免疫チェックポイント阻害剤キイトルーダの適応遺伝子であるMSI-high遺伝子のことは知る余地もありません。
胃がんの中で、その遺伝子変異を持つ割合がどの程度かも知らないので、
『遺伝子治療』という言葉に惹かれてしまうのだと感じました。

治験、臨床試験という言葉は一般にはなじみがなく、どのような研究が行われ、どのような経緯で、今の標準治療が確立されてきたかも知る機会がありません。
そのことが、標準治療は『並』であり、お金の高い治療の方がより良い治療なのだという誤解を生んでいます。
このことを理解すれば、なぜ、最初からオプジーボをしないのかがわかり、「うちなら希望すればオプジーボが副作用なくできます」という宣伝への警戒心を持つことができます。

本日は、主治医と話すことの大切さとして、オプジーボが一定期間奏功していて、旅行もできていた方が、
ある日、喉が渇き、尿の回数も多くなり、そのことを2日我慢していたことで命を落としてしまった事例をお話してくださいました。
これは、一型糖尿病というオプジーボの有害事象のひとつです。
その方は、もし、不調を主治医に話し、せっかくのオプジーボが続けられなくなったらという思いと、あと二日で診察日だからという気持ちで二日間を過ごしてしまったのです。
すぐに伝えていたら救えた命だと思います。設楽先生の、「いつ、主治医に伝えたらいいのか迷うなら、すぐに伝えてください。
先生は忙しそうだからという配慮は必要ない」という言葉に、多くの方が目を開いていました。
そして、緩和ケアの意味も話してくださり、『がんの治療は抗がん剤だけではなく、何のためにするのかという目的を、患者が中心となって、
主治医をはじめとする医療者と話し合って、決めていくものなのだ』という大切な理解に繋がったと思います。

セミナー後半は、患者家族からの質問に、設楽先生がひとつひとつ丁寧に答えてくださいました。
糖分はがんの栄養になるのか
抗がん剤とともに、サプリメントなどできることはないのか
ワクチン、様々な療法のこと
質疑応答を通じて、それが研究段階で会ったり、治験をしたけれど効果があるとは言えない結果だったり、まったく治験すらしたことがなかったりなども知ることができました。
人は【自分のしていることが、本当に最善であるのか】を迷っているのです。
テレビドラマのように、どこかに神の手をもつ人がいて、そこを探し当てれば助かるのではないかと思ってしまうのです。藁をもすがる想いは、そこに端を発しています。
【藁をもすがる患者家族が科学を理解できるのか】
今日のセミナーを通じ、私は、科学を、そして、医師が何を思っているのかを、日本が誇る研究を知ることが、患者家族を守るのだと改めて確認できました。
会場には、赤ちゃん連れの方が複数いました。
「4月の長野にも体調が良ければ行きたいと思っています」という声も寄せられました。
今日のキックオフのために遠方から駆け付けてくれた希望の会の理事は、全員、遺族です。
「自分たちの時に、このようなセミナーがあったらと心から思った。だから、キャラバンをやりぬいていこう」という言葉が沁みました。
このキャラバンは、#日本胃癌学会 #WJOG (西日本がん研究機構)が後援してくださり、叶えることができました。
共催の情報サイト #オンコロ は、本日、動画生配信もしてくださいました。
AYA世代を応援する #樋口宗孝がん研究基金 からの助成も、このキャラバンの一歩を支えてくれています。
多くの支援に心から感謝し、これからの9都市、やり遂げたいと思います。

30日は慶応義塾大学医学部、宮崎がん患者会ともコラボして
徹底的に質問にお答えするセミナーをいたします。

詳細はトップページのバナーよりご覧ください。
事前質問も受け付けています